ちっちゃな彼女。*30センチ差のいちごな初恋*
「ありがとー♪」
藤堂先輩の笑顔に、3年生はデレデレしてる。
「あ、良かったら苺ちゃん達も来てね♪裕ちゃんは強制だけどっ!」
ぎゅっと藤堂先輩は、西藤くんの腕を抱きしめた。
ずきんっ
胸の痛みなんて、感じてはダメなのに…。
西藤くんも振り払わない。
二人は付き合っているのだから、当たり前…。
なのに、あたしは何を期待しているんだろう。
「あ、試合始まっちゃう!早く早くっ!」
そう言って藤堂先輩は、西藤くんと3年生を引き連れて、体育館の外へと向かう。
そっか…藤堂先輩テニス部だもん、テニスに出てるんだ…。
そんな事をぼーっと思った時、藤堂先輩が振り返って、ウインクした。
あたしはハッと気付いて、頭をぺこっと下げた。
すると、藤堂先輩は一瞬微笑んで、さらさらの髪をなびかせながら、体育館を後にした。
「苺、大丈夫?」
心配そうに由紀ちゃんが、あたしの顔を覗きこんだ。
あたしは笑顔を作って頷く。
「美人って得だねぇ」
メグちゃんは、指で髪をくるくる巻きながら言った。
本当に得だ…。
藤堂先輩に関しては、容姿だけでなく、全てにおいて完璧な気がする。
欠点とかなさそう…。
「やっぱりライバルは先輩かなぁ…」
ポツリとメグちゃんが呟いた。
そういえば、西藤くんがあたしを好きだとか、誤解してたっけ。
誤解が解けてよかった。
メグちゃんって何気に、怖そうなんだもん。
「どうする?先輩の所…行く?」
「あ…あたしは、翔くんの応援する」
言いながら思った。
あれ?翔くん?
何かを考えているのか、下をずっと見て黙り込んでいた。
「翔くん?」
「えっ、あっ、ごめん何っすか?」
「次の試合、応援するから」
笑顔で言うと、翔くんも笑顔で「ありがとうございます」と、答えた。
藤堂先輩の事、決して嫌いじゃない。
だけど、応援には行きたくなかった。
やっぱり、仲良さそうにしてる二人は見たくなくて…。
あたしは翔くんの応援をした。