ちっちゃな彼女。*30センチ差のいちごな初恋*

「何?どうかした?」
「何でここに居るのっ!?」
「何でって…学校行くから」

確かにその通りだ。でも、

「あれ…藤堂先輩は?」

いつも一緒に登校しているのに、今日は姿が見当たらない。

「今日、休み」
「え、体調崩されちゃったの?」
「いや…そうじゃなくて…」

西藤くんは口ごもる。

「…そっかぁ」

詳しくは聞けなかった。聞きたくなかった。

「で、津田…何かあった?」
「えっ」

あ−…。

思い出して、キョロキョロと辺りを見渡すけど、翔くんは居ない。

「何でもないよ」

あたしは笑ってみせる。

だけど、本当はまた胸が苦しくなっていて…。

さっきより苦しいのは、

西藤くんが隣に居るからなのかな…。


結局、翔くんは姿を見せないまま、あたし達は学校に着いた。

良かった…会わなくて。

いくら彼女がいる人と言っても、告白した次の日に、他の男と登校って最悪だもん。

「津田」

教室の前で、西藤くんは立ち止まった。

「手出して」
「へっ?」
「手」
「あっはいっ」

あたしは慌てて右手を出す。

ころん

あたしの掌には、“イチゴミルクキャンディー”が1つ、転がっていた。

「まぁ元気出せ」

自分でも何だかよく分からない気持ちが、きゅう…っと込み上げてくる。

「あ…ありがとう」

一言お礼を言うのが、やっとだった。
弱っている時は、すぐ涙が出てしまうから…。

西藤くんは1回微笑んで、教室に入って行った。

震える手をぎゅっと握りしめて、あたしも教室に入ろうとした時、

〜♪

ポケットに入れていた携帯が鳴った。

いけない、マナーモードにしとかなくっちゃ。

思いながら、今来たメールを開く。

送り主は由紀ちゃん。
内容は、

【さっきはごめんね元気なかったけど何かあった?今日お昼一緒に食べよ4限目終わったら食堂で】

由紀ちゃん−…。

とても幸せな気分になった。

心が暖かくなる…。

西藤くんも由紀ちゃんも“好き”。

あたしは携帯を閉じて、教室へと入った。
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