ちっちゃな彼女。*30センチ差のいちごな初恋*

任せる…って…

「どういう事?」

あたしはフォークを持ったまま、首を傾げる。

「そのままの意味。彼女にするって言われたんでしょ?」
「うん…」
「じゃあそれって翔くんが、頑張って苺を好きにさせるってことでしょ?」
「そぉ…なの?」
「そうでしょ!つまりは苺にすぐ返事は求めてないってことで、翔くん次第なわけ!」

そっか…。
そうなんだ…。

直ぐに答え出さなくていいんだ…。

そう思うと、心が少し軽くなる。

「まぁ、ここは翔くんのお手並み拝見ね!」

由紀ちゃんは、少し意地悪っぽく笑った。

お手並み拝見…。
あたし…翔くんの事、友達としてじゃなく“好き”になるのかな…?

「こら〜っ、何また暗くなってんのよ?」
「だって…」

“好き”になることは、この先ないような気がして…
やっぱり最後は、翔くんを傷つけてしまうような気がして…。

「わたしは、苺が翔くんと付き合ったらいいなぁ…って思うよ?」
「え?何で?」
「翔くんいい奴だし、苺のこと大切にしてくれそうだし…」

確かに大切にしてくれるだろう。
昨日、抱きしめられたときに、何となくだけど感じた。

「何より苺には、もっと楽しい恋してほしい」

由紀ちゃんは、そう言って笑った。

「ありがとう…」

あたしも笑うけれど、きっと切ない顔をしてしまった。

楽しい恋…。

初めての“恋”は、
辛く…切なくて…。

翔くんに恋すれば、
想像していたような、
楽しい“恋”が出来るのかな−…。

「あ、苺急がなきゃ!」

時計を見て、由紀ちゃんが言う。

「ホントだっ!」

あたし達は、急いでお弁当を食べた。
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