ちっちゃな彼女。*30センチ差のいちごな初恋*
あ………。
翔くんが何を言っているのか、見た瞬間に分かった。
そこには、りんご飴を筆頭にパイン飴、ぶどう飴などが並んでいる。
そして、いちご飴−…。
胸がきゅんと痛む。
だってこれは1年前、西藤くんがくれたものだから…。
「苺先輩、いる?」
翔くんは笑顔で、あたしの顔を覗き込んだ。
「あ…あたし、りんご飴がいいな」
「え?いちごあるよ?」
「うん、でもりんご飴が食べたいから」
あたしも笑う。
いちご飴は選べない。
きっと食べてしまったら、思い出してしまう。
恋の味−…。
もう諦めたんだから、思い出しちゃいけないの。
早く…早く、翔くんを好きになれたらいいのに。
そう思うのに、いちご飴を見てしまってから、胸が苦しくて…。
「…大丈夫?」
翔くんは、あたしの異変に気付いたのだろう、心配してくれた。
「え?大丈夫だよ?」
あたしは普通に振る舞おうとした。
だけど、次の瞬間絶句する−…。
見つけてしまったの。
西藤くんと藤堂先輩。
仲良く歩いていく二人の姿…。
別に普通の光景。
学校でも度々見かける、普通の光景…。
だけどね、あたしの心は押し潰されそうになった。
紺色の浴衣を着た、藤堂先輩の手には…握られていたんだ。
いちご飴−…。