ちっちゃな彼女。*30センチ差のいちごな初恋*
「苺…先輩…」
翔くんは座り込んで、あたしと同じ目線になる。
涙が滲んで…顔がよく見えない。
「っ…ごめん…ねっ…」
あたしは声を絞り出す。
「いいよ」
翔くんはあたしを抱きしめた。
落ち着く…。
あたしは静かに目を閉じる。
翔くんは優しくて、一緒に居ると楽しくて…好き。
だから
「…翔くん」
あたしは翔くんから体を離した。
「あたしはっ…やっぱり…翔くんとは…付き合えないよ」
好きだから、中途半端なことしちゃいけない。
「でもっ」
「ごめんね…」
気付いてしまったから。
未来のことは、確かに分からない。
だけど、一つ分かったことがある。
あたしはずっと、西藤くんが好き…。
想いが叶うことはないとしても、好き−…。
“サヨナラ”したはずの想いは、“サヨナラ”出来てなかったの。
いつも…ずっと…あたしはこの想いを抱えていて、
それはこれからも同じで…。
あたしは不器用だから、この想いを抱えながら、もう一つの想いを抱えるなんて出来ない。
「ごめんなさい…」
「…うん」
滲んだ視界の先に見えるのは、翔くんの歪んだ笑顔だった。
無理して笑ってる…。
あたしを心配させないために。
一度止まりかけた涙だけど、また溢れる。
こんなに想ってくれてるのに…どうして西藤くんなんだろう。