ちっちゃな彼女。*30センチ差のいちごな初恋*
バスを降りて少し走ると、すぐに津田は見付かった。
ベンチにちょこんと座る、小さな影。
あの子に違いないと思った通り、津田だということが、近づくほどはっきり分かっていく。
津田はこっちを向いて、立とうとして…
「っ!?」
地面に倒れた。
「津田っ!」
名前を呼んで、全速力で駆け寄り、
「津田っ、大丈夫かっ?」
俺はしゃがんで、津田の上半身を起こした。
「あ…西藤くん。ありがとう…」
こんな時でも…津田は笑う。
バカだろ……倒れるくらい、辛いくせに…。
赤くほてった顔。
ボーっとした感じの、瞳と声。
そっと、自分の手を津田の額に当てた。
熱い…。
自分と比べなくても、明らかに熱があるのが分かるくらい、熱い。
何故か、はがゆい気持ちに襲われて…何も言えない。
「あはは…あたしばかだね…早く、戻らなきゃね…」
そんな俺に気付いたのか、また津田は笑って、立とうとした…が、ふらついて俺の肩に倒れこんだ。
「…ばか」
「ご…ごめんなさい…けほっ」
力が入らないのか、津田はそのまま動かない。
俺は力を入れて、津田を抱き抱えた。
「きゃ…西藤くん?」
真っすぐに俺を見つめる、津田の瞳。
「無理すんなって」
「…ごめんなさい」
津田は顔を隠すように、うつむいた。
ゆっくりと歩き出す。
いつだかこんな風に、麗奈を抱き抱えたことがあったけど、重さが全く違うと思った。
物質的には、身長のせいだろうか…津田の方が圧倒的に軽い。
でも、津田の方が重たいんだ…。
津田の方が重い−…。