ちっちゃな彼女。*30センチ差のいちごな初恋*
☆裕也side☆


メールを送信し終えた携帯を閉じて、俺はエントランスのソファーに腰かけた。

「………」

ドクン…ドクン…

心臓がやけにうるさい。

緊張…しているのだろうか。
していてもおかしくはない。

昨日、津田にキス…したんだから。

そう、“してしまった”じゃなくて、“した”。
軽い気持ちや、ノリでしたわけじゃない。

俺は昨日決めたんだ…。


「西藤くんっ…」

はっと顔を上げると、そこには津田が立っていた。

病人が走ってくんなよ…。

津田の肩は大きく上下して、息は切れている。
顔が赤いのは、熱のせいだろうか。

「走らなくてよかったのに。熱…大丈夫?」
「大丈夫だよ」

津田はいつものように微笑んだ。

愛しい…という気持ちと同時に、胸が締め付けられて、苦しくなる。

「なんで…西藤くんがここに居るの?」
「自由行動だから。バス乗り継いで来た」

わざと的外れな解答をする。

「知らない所なのにすごいねっ!やっぱり、西藤くんは偉いやぁ!」
「………」

もしかして本当に、そういう質問だったのか…?

「………」

津田も黙り込む。

「あの…さ、ちょっと外出れる?」
「え?」
「ここ、他の人達が見てるから」
「あっ…うん」

こんな時間に、こんな大きなホテルに、高校生2人だけが居るのは、異様な光景。
周りの人達が、ちらちらとこっちを見ていた。
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