ちっちゃな彼女。*30センチ差のいちごな初恋*

あたしは慌てて振り向いた。

だって、この声は…。

「おはよ」

少し微笑んで挨拶したのは、やっぱり西藤くん−…。

「お、おはよっ!」

あたしは、急いで挨拶を返す。

「今日髪下ろしてんだ?」
「え…あ、うん」

いつもは耳の下で二つに結んでいるんだけど、今日は寒くて下ろしていた。

「それ、かわいい」

ドキッ

「えっ…!」

何っ!?

「じゃあ、また教室で」
「うっ、うん」

西藤くんは、あたしの前を歩いて行ってしまった。

あ…一緒に行ってくれないんだ。

遠くなる西藤くんの背中を、眺めながら思った。

彼女居るんだもん、当たり前か…。
ん?

そういえば、今日は藤堂先輩と一緒じゃなかった。
いつも一緒に登下校しているのに…。

何かあったのかな…?

“何か”
ふと、“別れ”を想像してしまって、自己嫌悪。

あたしは何考えてるんだろう。
最低だ…。

でも、“かわいい”なんて言われたらら余計期待しちゃうよ…。

最近の西藤くんは、何となく優しくて…。

あたしは真っすぐ、遠くなる西藤くんの背中を見つめた。


「………」

この時、あたしは自分を見つめる視線に、全く気付かなかった。
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