ちっちゃな彼女。*30センチ差のいちごな初恋*
体育館の中は、いつもと何ら変わらない光景。
バスケ部とバレー部が、体育館を二つに区切って練習していた。
本当に翔くん居るのかな…?
見渡すと、床に座って部活の人と喋っている、由紀ちゃんが目に入った。
でも、今日は由紀ちゃんじゃなくて。
「あっ」
あたしは1分くらいして、ようやく翔くんを見つけた。
翔くんはバレー部の中にいて、アタックの練習後に転がっていくボールを、次々に拾っている。
バレー部に入部したのかな…。
何だか声をかけるのが躊躇われ、ぼんやりその姿を眺めていると、視線に気付いたのか、翔くんと目が合った。
手を振ると、翔くんはにこっと笑って、バレー部の先輩に何かを言った後、こっちに来てくれた。
「なんかごめんね…大丈夫?」
体育館の外に出ながら、翔くんに謝る。
「大丈夫。何処かに移動する?」
「ううん…すぐに終わるからここで」
「うん」
「あの…」
“西藤くんと付き合ってる”
単純なことなのに、なかなか言えない。
あたしのことを想ってくれてるのに、あたしから聞かされるなんて、酷じゃないだろうか…。
そっと翔くんの顔を見る。
翔くんは優しい顔で、待っててくれた。
ううん…あたしなら、聞きたい。
辛いかもしれないけど、本人の口からちゃんと…。
「あたしね……知ってると思うけど、西藤くんと付き合ってる」