ちっちゃな彼女。*30センチ差のいちごな初恋*
「うん。おめでとう」
“おめでとう”と、言ってくれた翔くんの顔は、すごく穏やかで…。
でも、あたしの胸は罪悪感により、苦しくなる。
あたしだけ…幸せになんて…。
「何て顔してんの、やっと想いが通じて良かったじゃん」
「うん…」
「何?やっぱり俺の方が好きって?」
翔くんの、いつもの調子の冗談に、あたしはきょとんとした後、肩の力が抜けたみたいに、苦笑した。
「俺さ…苺先輩が今でも好きだけど、本当に祝福できるよ。苺先輩がどんなに西藤先輩想ってたか、知ってるから」
「…うん」
優しくて暖かい…翔くんの言葉に、嘘はないと感じる。
だから、素直に微笑む。
「幸せそうにしやがって〜っ♪もし別れたら、ぜってー彼女にするからっ!」
「わっ、別れないよっ!」
「「…はははっ!」」
顔を見合わせ、あたしと翔くんは笑い合った。
「じゃあ俺、そろそろ戻らないと…」
翔くんは体育館のドアに、手を伸ばす。
「ごめんねっ。あ、バレー部入ったの?」
あたしの問い掛けに、翔くんは頷いた。
「正式な入部は、2年に上がってするつもりだけど」
だから、最近会わなかったんだ…。
「翔くんがバレーしてるの、カッコイイよ!」
「ありがとっ!彼氏持ちが惚れんなよ!」
翔くんは体育館のドアを開けて、笑った。
「翔くん…ありがとう」
翔くんには、いっぱい支えてもらった−…。
辛い気持ち、好きな気持ち、分かってくれた。
ありがとう…。
あたしを初めて、“好き”と言ってくれた人−…。