ちっちゃな彼女。*30センチ差のいちごな初恋*
トントン
「苺ちゃん?」
式が終わって、校庭で写真を撮り合ったり、お喋りする先輩たちの姿を、ただ見てた。
そんなあたしの肩を、誰かが叩く。
「あっ、おめでとうございます」
「ありがとう」
風で肩までの髪が、さらっと軽く靡き…
藤堂先輩は柔らかく微笑む。
「もし…嫌じゃなかったら少し話さない?」
「はいっ」
あたしも微笑んだ。
誰も居ない校舎裏に移動した。
あたしも藤堂先輩も、西藤くんのことで有名になっているから…。
「桜はまだね」
藤堂先輩は桜の木を撫でながら、呟くように言った。
1本だけ、静かに…どっしりと、その桜の木は立っていた。
知らなかった…こんな所に桜の木があったんだ。
さらさらと透き通るように、靡く髪…
憂いを秘めた表情…
すらりと伸びた手足…
藤堂先輩はとても綺麗で…
西藤くんがあたしを選んだことが、今でも不思議…。
「苺ちゃん…」
「えっあっ」
藤堂先輩に見とれていたあたしは、いきなり声をかけられてびっくりする。
「本当にごめんなさい」
藤堂先輩は頭を下げた。
あたしは切ない気持ちになる。
だって、今あたしは幸せだから…。
最終的につらい思いをさせてしまったのは、藤堂先輩だから…。
「もう…謝らないでください」
あたしはそっと、触れるように声をかけた。