ちっちゃな彼女。*30センチ差のいちごな初恋*

ドキン…ドキン…

状況を把握して、あたしの心臓はうるさくなる。

「あっ…あのっ…西藤くん?」
「何?」

西藤くんは、あたしを抱きしめたまま、返事をする。

「えと…あの…いきなりどうしたの?」
「…別に」

別にっ!?
理由はないのっ!?

「あのっあのっ!…誰か来ちゃうかもっ」

軽くパニック状態だけど、必死に冷静になろうとする…のに、

「いいよ…来ても」
「え…」

抱きしめる力が強くなる。

そんなこと言われたら…
あたしも誰か来てもいいって、思ってしまう。

ドキン…ドキン…

ううん…誰も来ないよ…きっと…。

ゆっくりと西藤くんの背中に、腕を回そうとした…

と、同時に、


ぎゅるるるる


「っ!?」

変な音が…した。

驚いたのは、あたしじゃない。
あたしは、耳まで真っ赤に染まっていくのが分かるくらい、顔が熱くなる。

「…ぷっ…っ…」

西藤くんは、あたしを抱きしめたまま、小刻みに揺れる。

「わっ笑わないでっ!」
「だって…津田っ」

西藤くんは、そっとあたしの体に巻いた腕を解いた。そして、

「腹減ったよなっ」
「っ〜…」

少し笑いを堪えながら、あたしの頭をポンポンと、いつものように叩く。

最悪だ…。
好きな人の前で、お腹が鳴るなんて…。
しかも、こんな時に…。

穴があったら入りたいって感じで…いや、穴を掘ってでも逃げたい。

だけど、逃げられるはずもなくて…。

「帰ろうか」

西藤くんは微笑む。

「うん…」

あたしは静かに頷いた。
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