ちっちゃな彼女。*30センチ差のいちごな初恋*
「じゃあ、あたしと苺、こっちだから」
楽しい時間というものは、本当に短く、あっという間に過ぎてしまった。
津田を家まで送ろうかと思ったけど、中野が居るから遠慮することにした俺は、軽く頷いた。
「じゃあ、またね」
津田は微笑みながら、手を振る。
「あぁ」
俺も手を振って、背を向け歩き出そうとする…が、
ぐいっ
服を急に引っ張られ、津田かと思って振り向くと、中野だった。
「何?」
「苺の誕生日、4月21日だから」
中野は背伸びして、耳元でそう言うと、ニッと笑った。
4月21日…。
「…ありがと」
「どういたしまして〜♪んじゃ、また♪」
「…?」
津田は「何?」って感じの顔をしていたけど、そのまま中野に連れられ、帰って行った。
そんな二人の姿を見送った後、俺も帰ろうとして…やっと1人の存在を思い出した。
「か、川原…?」
川原はふるふると震えている。
「お…お前、由紀に何言われたんだよぉ!」
今にも掴みかかってきそうな勢い。
「…別に」
少し面白いと思ってしまった俺は、川原をからかう。
「お前っ、津田さんだけじゃ物足りず、由紀にまで手を出す気かっ!」
一人熱くなる川原を無視して、俺は歩き出した。
もちろん川原もついてくる…怒りながら。
由紀…か。
川原が中野の名を呼ぶ声が、やたら耳に残る。
「……苺…」
暗くなり始めた空に向かって、呟いた。