ちっちゃな彼女。*30センチ差のいちごな初恋*

フワッと春の風が、あたしと西藤くんを包む。

水色の空に浮かぶ、白い雲。

ここは屋上。
3年生になってから、誰も来ない屋上で、西藤くんとお昼を食べるのが日課になっていた。


「西藤くん、またパン?」
「ん?あぁ」

一緒にお昼を食べるようになって知ったこと…西藤くんのお昼ご飯は、パンが多い。
…っていうのは、お母さんのお仕事が大変みたいで、お弁当を作れない日が多いらしいんだけど…。

「何、不満そうな顔してんの?」
「だって…」
「じゃ、津田が弁当作ってよ」
「えっ!?あたし、料理はっ…!!」
「知ってる。1年の時フライパン焦がしてたの見たから」
「なっ何でそれをっ!?」

西藤くんは笑う。

うぅ…。だって、お料理苦手なんだもん…。
でも、これを期に勉強しようかな…なんて。


「津田」

ご飯を食べ終わって、西藤くんがおいでおいでと手招きをする。

「…?」

あたしは少しだけ西藤くんに近づいて、また座った。

「本当に犬みたいだな」
「えっ!?」

それは…

「あたしが…ちっちゃいから?」
「うーん、それもあるかもだけど…仕草とか、なんって言うか…愛らしいところが」
「っ!?」

西藤くんのふっと笑った顔と、“愛らしい”って言葉に、あたしの顔は赤く染まる。

「犬…だから、首輪つけないとな」

そっと、西藤くんはあたしの首元にその長い手を伸ばした。

え−…?

首には何か、冷たいものが当たる感触。

「誕生日おめでとう」
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