ちっちゃな彼女。*30センチ差のいちごな初恋*
☆裕也side☆


「誕生日おめでとう」

津田の首に回した手を離す。

すると、首の中央には小さなイチゴが見えた。

首輪と称して渡した物は、イチゴモチーフのネックレス。


「え…何で…?」

津田はネックレスを指でなぞる。
「何で…誕生日って…」
「さあね」

ひどく驚いた様子の津田に、意地悪を言ってみる…と、

津田は瞳に、みるみる涙を貯める。

「津田っ?」

少し焦って声をかけると、津田は笑って、

「ありがとうっ…」

その瞬間、涙が零れる。

そんな…

「いや、安もんだし…」

俺の言葉に、津田はふるふると首を横に振る。

「嬉しい…ありがとうっ…本当にありがとう…」

そんな、泣くようなことじゃないのに。

涙を流しながら、何度も何度も「ありがとう」と言う津田を見ていると、胸が締め付けられるように苦しくなった。

苦しいけど、嬉しくて…矛盾した気持ち。

「ありがとう…」
「うん」

俺は泣き止まない津田の頭を、撫で続けた。


キーンコーンカーンコーン…

「あ…」

津田が少し落ち着きを、取り戻した頃。

予鈴が鳴って、津田は立ち上がろうとしたけれど、俺はその手を掴んで止めた。

何も言わなくても分かったかのように、津田は微笑んで1回頷くと、また座る。

津田の目は赤く腫れて、すぐ授業に出れる状態じゃないから…次はもうサボり。
< 255 / 494 >

この作品をシェア

pagetop