ちっちゃな彼女。*30センチ差のいちごな初恋*
「苺?」
ポンッと肩を叩かれ、振り向くと…
「あ、西藤くんっ」
「苺、違う」
「あ…ごめんなさい。……裕くん」
あたしが“津田”から“苺”に、なったように、
“西藤くん”から“裕くん”に、なった。
“裕也”ってなんか呼べなくて“裕くん”−…。
あんなに藤堂先輩と、名前で呼び合っているのが羨ましかったのに、いざ自分がそうなると、恥ずかしくてしょうがない。
でも、日に日に慣れて来てるから、大丈夫。
「で、何ぼーっとしてんの?」
「あ!何でもない、何でもない!」
「…?」
あたしは笑ってごまかした。
「じゃあ、帰ろうか?」
「うん」
あたしは靴を履いて、歩き出す。
裕くんは本当に何も聞かないんだなぁ…って、思った。
それは、信じてくれてるってことなのに…あたし、変なの。
少し寂しい…なんて。
学校を少し離れた所で、あたしは裕くんの袖を引っ張った。
すると、優しい温もりがあたしの手を包む。
いつの間にか、袖を引っ張るのが“手を繋いで”の、合図になっていた。
もし…
もし、あたしがさっき翔くんのことを考えていたと言ったら、裕くんはどうするのだろう…。
嫉妬してくれるかな…。
「裕くん…」
「ん?」
「んー、何でもない」
「何だそれ」
裕くんは苦笑した。
あたしも笑う。
試すようなことは止めた。
裕くんの笑顔が、大好きだから−…。