ちっちゃな彼女。*30センチ差のいちごな初恋*
本棚の方へ倒れかけたのを、手を引っ張って、自分の方に引き寄せる。
「ひゃんっ!」
少し強く引っ張りすぎて、苺は顔面を俺の体にぶつけた。
「ごめんっ!!」
すぐに離れた苺だけど、顔はうっすら赤く染まっている。
「何か育てんの?」
本を手渡しながら聞く。
「うん、イチゴを」
「あー…確かにもう少し、育った方がいいかもな」
俺は苺の頭をポンポン軽く叩くと、苺は膨れっ面をした。
「違うもんっ!あたしじゃないもんっ!」
「へぇ…じゃあ、育ってんの?あ、そういえば身体測定どうだった?」
「伸びたよっ!」
「何センチ?」
「……0、2センチ…」
「それ、伸びたって言うのかよっ!」
「うっうるさいなぁ〜っ。伸びたの!」
苺はくるっと本棚の方を向いて、俺に背中を向けた。
少し、いじめすぎただろうか。
「苺?」
「…」
「ごめんって」
「…いじわる」
滅多に怒らない人が、怒ると怖いというのは本当だ。
「苺…」
恐る恐る声をかけると、
「なーんちゃって♪」
くるんと勢いよく、こっちを向いた。
「背のこと言われるのは、慣れっこですから♪」
えへへと、笑う苺。
だけど、“違う”って思った。
その笑顔は違う…。