ちっちゃな彼女。*30センチ差のいちごな初恋*
「苺…ごめん」
「え?」
あまりからかっては、いけなかった。
俺は苺の背なんて、初めから気にしたことはない。
だけど、本人は気にしてる。
こっちは冗談のつもりでも、きっとすごくすごく、気にしてしまうんだ。
苺にとって身長は、コンプレックス…。
「ごめんな」
もう一度謝ると、苺の顔には笑顔が浮かんで、「いいよ」と小さく呟いた。
「小さくて、得することもあるんだよ?」
「例えば?」
「素敵な人に、黒板消し手伝ってもらったり…とか」
言いながら、恥ずかしそうに笑う苺。
可愛くて、捕まえたくなった。
本棚に両手をついて、苺を逃げられないようにする。
「えっ!?ちょ!!裕くんっ!?」
顔を近付けると、苺は顔を真っ赤にさせて、慌てる。
それでも俺は、顔をそのまま近づけた。
「〜っ!!」
目をぎゅうって閉じた苺は、やっぱり可愛くて、笑ってしまう。
おでこに軽くキスをした。
「…もぉ、裕くん」
「あっ」
目をゆっくり開けて、恥ずかしそうにする苺を見ていて、ふと思い出す。
「今日、用事あるんじゃねぇの?」
「へ?」
「ほら…一緒に帰れないって」
「……」
数秒の沈黙の後、
「あっ…あーっ!!」
苺も思い出したような声を上げた。そして、
「裕くんごめんっ!あたし教室戻るからっ!」
それだけ言うと、急いで走って行ってしまった。
「忘れてたんだ…」
俺は残された図書室で、静かに笑った。