ちっちゃな彼女。*30センチ差のいちごな初恋*

後ろに居るはずの苺からは、何も物音がしなかった。

声も…
近寄る足音も…。

酷いことを言ったと思いながらも、意地を張って、どうすることもしなかった。

苺を置き去りにして、歩き出す。

嫌いになったわけじゃない…。
むしろ大好きなのに…

それ故に、ムカついた。


そのまま教室にも戻りたくなくて、階段を上る。

向かった先は…屋上。

気分を紛らわせたかった。
風に当たって、頭を冷やそうと思った。

いつも苺が「重たいよね」と、言うドアを、何てことなく開けると、ふわっと優しい風が体を包む。

いつも苺と一緒に、昼休憩を過ごした屋上。

苺は昼食を食べ終わると、決まって眠たそうにしてて…その姿が、堪らなく愛らしかった。

そして、誕生日プレゼントをあげたのも、ここ。

涙した苺−…。

そう…涙したんだ。

あんなに想ってくれているのに、自分は何をしているんだろう。

他の男と居るのが嫌とか…なんて子供なんだろうか。

「…バカだな」

ふっと笑いを混じらせ、呟いた。

風は不思議と、イラついてた心を穏やかにさせる。

謝りに行こう…。

振り返ると、ドアの前に1人の女の子が立っていた。

「間…?」
< 273 / 494 >

この作品をシェア

pagetop