ちっちゃな彼女。*30センチ差のいちごな初恋*

勢いよく、階段を駆け降りる。

ギィ…パタン

ドアが閉まる音がして、階段を下りる足を止めて、振り返った。

閉まったドア。

「…」

開かない。

追いかけて来てくれないんだ…。


走るのを止めて、そのまま歩いて階段を下りる。

下りて行けば、もうすぐ休憩が終わるのだろう…すれ違う人達。

みんな笑って通り過ぎてく…。

なのに何であたし…泣いてるんだろう。

目には涙が浮かんで、今にも零れ落ちそうだった。

あたしも泣いてるのに…裕くんは、慰めに来てくれない。

“もう好きにしていいから”

冗談だと、信じたかった裕くんの言葉が、胸を締め付ける。


長い階段を降りて、教室がある二階へ着くと、

「苺っ…」

そこには、あたしを心配してくれる人が居た。

「由紀ちゃん…」
「苺…」

あたしに駆け寄って、心配そうに背中に手を回す由紀ちゃんは、事情を知ってるって感じだった。

姿はもうなかったけど…
きっと、翔くんだろう。

「由紀ちゃん…」

フラれちゃった…。
奪われちゃった…。

“恋人”と“友達”が、両方離れて行っちゃった…。

ポタッポタッと、音を立てるくらい、大粒の涙が落ちた。

「…お腹痛いや」

あたしは泣きながら笑う。

「うん…保健室行こう?」

あたしの嘘に、由紀ちゃんは頷いて、保健室に連れて行ってくれた。

こんなんじゃ、授業受けれないから…。


1時間休んで、教室に戻るとメグちゃんも、メグちゃんの荷物もなくなっていた。

メグちゃんがどうしたのか、誰にも聞かなかったのは、

「西藤くんと一緒だったよ」

って言われるのが、怖かったから…。
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