ちっちゃな彼女。*30センチ差のいちごな初恋*
☆裕也side☆


「苺は?」

1時限目が終わって、教室を覗きに来たけど、苺の姿はなく、中野に聞いた。

昨日から、何度も電話とメールを送っているのに、返事はなくて…朝も待っていたのに、苺は来なかった。

「苺なら、階段から落ちて…保健室」
「はっ!?」

予想外の答えに、俺は驚く。

「うん、頭打ったみたいなんだけど…」

“頭を打った”

その言葉に、恐怖を覚える。

だけど、続けられた中野の言葉は、もっと予想外だった。

「うーん…気絶したって言うか…寝てるよ」

「………寝てんの?」
「うん。まぁ、行ったら分かるから」

中野は苦笑しながら、俺の背中を軽く押す。

「行ってみる、ありがと」
「苺に優しくしてあげて♪…あ、先客居るけどね!」
「先客?」
「それも行ったら分かるから♪」
中野はイタズラに笑った。

先客…誰だろうか?
頭に浮かんだのは、あの男だったけど、すぐに消す。

俺…どこまで嫉妬深いんだよ。

それより、大事に至らなくて良かった。

“寝てる”と、聞いて驚いたけど、同時に安心した。


静かな保健室のドアを、なるべく音を立てないように開ける。

「あら…どうかした?」

優しそうなおばちゃんって顔の、保健室の先生が静かに聞いた。

「あの、津田さんって来てますか?」
「あぁ…そこのベッドで寝てるわよ」

3つ並んだベッド。
その一番窓際のカーテンが、閉められていた。
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