ちっちゃな彼女。*30センチ差のいちごな初恋*
☆裕也side☆


夏休みに入って数日…。
多分今日が、一番大きなイベント。

広いホールに、慣れないスーツ。
ネクタイを閉めた首元が、少しきつくて、緩めたいけど緩められない。

コツ…コツ…

と、そこへ足音が響く。

「裕ちゃん、久しぶり」

「…麗奈」

淡い水色のドレスに身を包み、うっすらと化粧をした、麗奈が微笑んだ。

「明人さんは?」
「今、会ってきたよ。そのうち…こっち来るんじゃないかな?」

少し心配してたけど、麗奈の顔を見ると、何の心配も必要ないことが分かる。

しばらく見ないうちに、麗奈はすっかり大人になっていた。

「お兄ちゃん、幸せそうだった…」

優しく笑う麗奈。

麗奈の恋は、きちんと終わりを告げることが、出来たのだろう。
心から祝福する麗奈に、戸惑う雰囲気は全くない。

「裕也っ」

パタパタという足音と、同時に声がした。

「おめでとうございます」

俺は頭を軽く下げる。

「ありがとう」

少し照れて笑う明人さんは、確かに幸せそうだ。

「…お兄ちゃん、忙しいんじゃないの?」

麗奈が静かに言う視線の先には、何やら明人さんを探しているらしきスタッフ。

「ああ。ごめん、裕也…また後から」
「はい」

返事をすると、明人さんはパタパタと、また走って行った。


特別な今日は、
明人さんの結婚式−…。
< 304 / 494 >

この作品をシェア

pagetop