ちっちゃな彼女。*30センチ差のいちごな初恋*

式が始まると、まるで違う世界に来たような感覚に襲われた−…。

身近な人が結婚するのは初めてで、不思議な気分。

麗奈が姉さん的存在なら、明人さんは、兄さん的存在…。
そんな人が今、一人の女の人と夫婦になろうとしているのだから、不思議でも無理はない。

人はいつの間にか、大人になってゆく。

俺もいつか、こんな日を迎えるのだろうか。


明るい教会に、

純白のウエディングドレス。

指輪を交換し合う二人からは、幸せが滲み溢れていて…。

そんな姿に、一人の女の子を重ねて、無意識に微笑んでいる自分が居る。

きっとそれは願いだった。

“いつか”っていう願い−…。



「裕ちゃんっ!」

式が終わって、外で何となく空を見ていた俺に、麗奈が駆け足で近付いて来た。

「裕ちゃん!どういうこと?!」

さっきとは、全く違う麗奈の声。
柔らかだった声は、今は張り詰めている。

怒ってる…?

「何が?」

何が“どういうこと”なのか、分からなくて聞いてみる。

「大学!おばさんから聞いたよ!」

あぁ、そのことか…。
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