ちっちゃな彼女。*30センチ差のいちごな初恋*
この声−…。
あたしは考えるよりも早く、反射的に振り返った。
「何こんな所で突っ立ってんの?」
そう言って、柔らかく微笑むのは、
「裕くん…」
何て偶然なんだろう…。
「とりあえず、ここ邪魔だから」
「あっ…」
放心状態のあたしの手を、裕くんは引っ張る。
引っ張られながら、人波を歩くのは一昨年と同じで…。
まるで、一昨年の今日にタイムスリップしたみたい−…。
でも、一昨年とは違うんだよね?
手を握り返してもいいんだよね?
そっと手に力を込めると、
裕くんは振り返って、こっちを見て微笑んだ。
その笑顔に、あたしの胸はきゅうって、なった。
「大丈夫か?」
人波から外れた所で、裕くんは足を止め、あたしの方を向いた。
「うん」
あたしは頷く。
「遅くなってごめん。…みんなは?」
「えっと…はぐれちゃったから、分かんない」
「またはぐれたわけ?」
「あ…はい」
あたしが恥ずかしそうに俯くと、裕くんは笑った。
本当は、わざとはぐれたんだけど…秘密にしておこう。
「ね、裕くん…?」
「ん?」
「さっきね…」
さっき、結城くんの言ってたことが、気になる。
だけど…
「どうして、あたしの居場所が分かったの?」
やっぱり聞けない。