ちっちゃな彼女。*30センチ差のいちごな初恋*
巾着から携帯を取り出して開くと、2件の着信通知と、1通のメール。
着信は、両方とも裕くん。
周りの音のせいか、電話かけてくれたのに、気付かなかった。
メールは由紀ちゃん。
【苺どこ?王子来た?】
ごめんね、きっと心配かけちゃったね…。
【来たよ一緒だから心配しないで】
メールを返して、携帯を閉じる。
裕くんと繋いでいた手が、さっきまでの感触と温かさを失って、何だか寂しい。
ずっと触れていたくて、
離れたくないなんて、
あたしはどうかしてるのかもしれない。
すごく幸せなはずなのに、時々切なくなるのは何故だろう…。
「苺」
顔を上げたら、裕くんが立っていた。
「おかえり♪」
「ただいま。はい」
隣に座って、何かを差し出す。それをあたしは受け取った。
これ…
「イチゴあめ…」
「そっ」
にっこりと裕くんは笑う。
イチゴ飴。
一昨年、裕くんに初めてもらった物で…恋の始まり。
去年は、藤堂先輩が手にしてた。
だから、あたしは手にすることが出来なくて…
なのに、今年は…手にしてる。
裕くんから貰って…。