ちっちゃな彼女。*30センチ差のいちごな初恋*

あたしの視線に気付いた裕くんが、こっちを見て笑う。

「何一生懸命見てんの?」
「えっと…」

答えようとしたのに、答えられなかったのは、

口を塞がれてしまったから。


あたしは目を静かに閉じる。

裕くんの唇の、柔らかい感触と温かい温度で、頭がのぼせちゃうみたいになる。

ドキドキしてしょうがないよ…。

幸せ−…。


ゆっくりと離れた、裕くんの口から一番始めに出た言葉は、

「甘い」
「イチゴ飴食べてたんだもんっ」

あたしが笑うと、裕くんも笑って、手を繋いで花火を見た。


空には大きな花が咲いて、

空に溶けるように消えて、

また花開いては、

また消えていく。

繰り返して…

繰り返して…

繰り返す−…。


今のあたし達は、きっと花開いてる時だった。

あたしは近くの、裕くんばかり夢中で見てて、

気付かなかった。

だけど、遠くをしっかりと見てた裕くんは、気付いていたんだね…。



花は溶けて、消えてしまうこと−…。
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