ちっちゃな彼女。*30センチ差のいちごな初恋*

と、思ったんだけど、

今日に限って寝坊しちゃって…結局一緒に行けず、何も聞けず。


「あのぅ…」

放課後、掃除当番を済ませて、裕くんの教室を訪ねた。

「苺ちゃん♪」

ドアからひょっこりと顔を出すと、結城くんがにこやかに手を振って、教室から出て来てくれた。

「何?裕也?」
「あっ…うん」

だけど、

「…居ない?」

教室の中を見て、居ないことは聞かなくても分かった。

「あー…ごめん。裕也、もう帰った」
「もうっ!?」

結城くんは苦笑しながら頷く。

「そっかぁ…」

帰ったんならしょうがない。
今日は諦めて、明日聞こう。

「ありがとう」

微笑んで、あたしは立ち去ろうとした…が、

「待って」
「?」
「苺ちゃん、デートしない?」
「…しないよ」

あたしは苦笑い。

「ちぇっ。まぁデートって言うのは冗談で…ちょっと付いて来てくんない?」
「え?」
「大丈夫!取って食ったりしないから♪」
「はぁ…」
「じゃ、決定〜♪荷物取ってくるから、ちょっと待ってて」

“行く”なんて、言ってないのだけど…。

あたしは半ば強制的に、結城くんに付き合うことになった。
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