ちっちゃな彼女。*30センチ差のいちごな初恋*

なんだかんだ言っても、結城くんは面白くていい人だし、裕くんの友達だから、変な心配はしていない。

でも…

こんなことしてる場合じゃなかったのに…。

裕くんと話する予定だったのにな…。

裕くんが悪いせいでもないし、結城くんが悪いわけでもないけど、何だか落ち込んでしまう。

「はぁ…」
「何?どうかした?」

無意識に出てしまったため息を、結城くんは聞き逃さなかった。

「えっあっ…」

“何でもない”って言いかけて、ふと思い出した。

夏祭りの日…結城くんが言った言葉。

“裕也から…聞いた?“

その問いに対して、心当たりのあることはない。

結城くんは何かを知ってる…?

あの時は、何だか嫌な予感がして聞けなかったけど…

「結城くんっ…夏祭りに言ってたことって、何のことっ!?」
「え…」
「何か知ってるんだよねっ?」
「苺ちゃん…」
「あ…ごめんね」

気付けばあたしは、結城くんにつかみ掛かる勢いで、聞いていた。

「そういうのはさ…本人に聞くのが一番じゃん?」
「うん…そうだね」

結城くんの言う通り。

裕くんに聞かなきゃ…。
裕くんから聞きたい…。


「じゃ、聞いておいで♪」

「え…?」

結城くんはニコニコしながら、あたし達の前の家を見た。

標札には…

【西藤】
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