ちっちゃな彼女。*30センチ差のいちごな初恋*
今日はよく人が来るな…。
「ごめん、ちょっと待ってて」
「うんっ」
俺はまた、苺を残して部屋を出た。
来客は近所のオバサンで、母さんに用事だったらしい。
今居ないと伝えると、早々に帰って行った。
…ったく、母さんが仕事してんの、知ってるだろーが。
なんて思いながら、部屋へと戻る。
キィ…
ドアを開けると、苺が机に向いて、立ち尽くしていた。
苺は気付いてないのか、こっちを振り返らない。
机の上になんかあったっけ…?
教科書とノート以外、特に思い当たる物はない。
「苺?」
「…」
応答がない。
ただ、立ち尽くしている苺を覗き込むようにして見ると、苺の目線は机の上じゃなかった。
苺の視線は、両手で持った1枚の紙−…。
「何見てんの?」
ひょいっと苺の手から紙を奪う。
「あっ、裕くんっ…!」
やっと気付いたのか、声を上げた。
「これ…」
紙を見て絶句する。
それは、俺の進路希望調査用紙−…。