ちっちゃな彼女。*30センチ差のいちごな初恋*
「裕く…」
あ…。
声を掛けようとして、止めた。
裕くんの目は、あたしを見ていなければ、どこも見ていない。
その目は、閉じられていた。
寝てたんだね…。
あたしはどうすることも出来なくて、そのまましゃがんだ。
すると、顔が良く見える。
茶色がかった髪、
あたしより全然長い睫毛に、
あたしより高くて整った鼻、
口は…少しだけ開いてる。
寝顔でさえ、他の人なんか比べものにならないくらい、カッコイイのに…開いた口のせいか、可愛く見えて、あたしは微笑むように笑った。
こうやって、裕くんの顔をちゃんと見るのは、すごく久しぶりな気がする。
疲れてるのかな…?
机の上には、教科書や参考書。
同い年で、同じ授業を受けているはずなのに、
ぜ…全然分かんないや…。
呪文のように並べられた言葉達。あたしには分からない言葉達。
裕くんは理解してるのかな?
あたし、裕くんの“彼女”なのに…分からないことの方が多い。
…全然釣り合わないよね。
机の上から裕くんの顔へと、視線を戻す。