ちっちゃな彼女。*30センチ差のいちごな初恋*

静かな夜の道を、二人で歩く。

本当に真っ暗で、一人だったらきっと、すごく怖かっただろう。

一人じゃないこと、何より一緒に居る人が、裕くんだということに感謝する。

「大丈夫?」
「え?」
「寒くない?」
「あっ、うん」

咄嗟に笑顔で返事をしたけれど、よくよく考えたら、「寒い」って言えば良かったかもしれない。

「寒い」って言ったら、どうしたんだろう…なんて、考える。

裕くんの顔を見上げると、裕くんは微笑んだ。

あたしも微笑み返そうとするけど…

どうして…?

笑えない。

胸がざわざわとざわついて、苦しくなる。

「今日遅かったんだねっ」

訳の分からない自分の気持ちを紛らわすように、あたしは口を開いた。

「あぁ。ちょっと先生と話し込んだりしてたから。苺は?」
「あたしはっ…」

言うのを一瞬ためらった。

嫌なことを思い出したから。

「……進路面接で…」
「そっか…。そういえば、苺の進路は?やっぱ進学?」
「うん…女子短大」

言いながら、違うことを考える。

考えることは、

裕くんの進路…。
< 339 / 494 >

この作品をシェア

pagetop