ちっちゃな彼女。*30センチ差のいちごな初恋*
「苺…?どうかした?」
「あ…」
ふっと我に戻る。
暗闇の中でも分かる、裕くんの心配してる顔。
「何でもない」
あたしは笑顔をつくるけど、きっとぎこちないだろう。
「そっか」
呟くように言って、また前を向いて歩き出す。
裕くんの方が歩幅が大きいのか、少しあたしは遅れて歩く。
見てるのは裕くんの背中…。
こうやって、どんどん離れていくの…?
今は簡単に触れられる距離。
手を伸ばせば、
袖を引っ張れば、
手を繋いでくれる−…。
あたしは少し早歩きして、袖を掴もうとした。
だけど、掴めなかった。
あたし…裕くんに触れる資格ない。
頑張ってるの知ってるのに、
“落ちちゃえばいい”って…。
彼女として…人として…
最悪だね−…。
そのまま、離れて歩いた。
時々振り返って、こっちを見る裕くんの笑顔に、胸が苦しくなりながら。
突然立ち止まった裕くんにびっくりすると、いつの間にか家の前まで来ていた。