ちっちゃな彼女。*30センチ差のいちごな初恋*
カタ…
後ろで物音が聞こえた気がした。
だけど、あたしは振り返らない。
そのままドアに手を掛ける−…。
「待って」
トサッ…
手から荷物が滑り落ちる。
え−…。
何が起こったのか、分からなかった。
突然、暖かい温もりと…
懐かしく、優しい香りに包まれた…。
あたしの肩に乗せるように、回された手。
その手を見て、ようやく自分が後ろから、抱きしめられていることに気付いた。
「…ごめん」
本当に小さな声で、裕くんは言った。
「−…」
あたしは何も言えない。
気持ちが喉につまって、声にならない。
「俺…やっぱ無理。
苺を忘れるとか…無理」
熱いものが、目に込み上げる。
「いつも苺を探してた…。近くに居たら、こうやって触りたくて…。ごめん…」
久しぶりに、こんなに近くで聞く裕くんの声。
どうしようもなく苦しくなったのは…
“ごめん”という言葉が、震えてる気がしたから。
泣いてるの…?
顔が見えないから、分からない。
だけど、あたしはそのまま動くことも出来ない。
「…離れんな…」