ちっちゃな彼女。*30センチ差のいちごな初恋*
「じゃあ…あたし、おばさんとおじさんと先に帰るから、ゆっくりね♪」
麗奈が体を向けた先には、母さんと父さんが居た。
「えっ?帰っちゃうんすか?」
何故か、名残惜しそうにする大和。
「うん。またね、大和くん」
言いながら麗奈は、俺と大和に手を振る。
母さんと父さんも、軽くこっちに手を振って、帰って行った。
あまり俺に干渉せず、いつも信じてくれる家族…。
父さんと母さんの隣を歩く麗奈も、家族と同じ…。
俺の…“姉さん”。
「あーあ…行っちゃった」
大和が隣で呟いた。
「どうかしたのか?」
「裕也、気付いてねーの?」
「?」
何が…と聞くよりも早く、大和が耳打ちする。
「周り見てみろよ」
周り…?
言われて目だけで周りを見渡すと、すぐに分かった。
視線が…痛い。
気付けば、女子が至るところからこっちを見ていて、今にも襲いかかって来そうだ。
「はぁ…」
小さくため息を漏らす。
さっきまで麗奈が居たから、近寄って来なかったのだろう。
「大和、任せたっ!」
「はっ!?」
俺は走り出す。
大和は追って来なかった。
いや、追えなかったのかもしれない。