ちっちゃな彼女。*30センチ差のいちごな初恋*
「中野せんぱーいっ♪」
可愛いらしい声がしたと思ったら、一気に女の子に取り囲まれた。
「先輩っ!ボタン下さい!」
「あたしも欲しいー!」
「うちはリボンで!」
次々に注文する下級生達を、あたしはただ、呆然と見ていた。
なるほど…貰われる側か…。
「はいはい、分かったから!」
由紀ちゃんの声で、場は静まる。
「とりあえず部室行こう、部室!」
言いながら由紀ちゃんは、あたしを見る。
「苺も行く所あるでしょ?行っておいでよ」
微笑む由紀ちゃんに、あたしも微笑み返して、頷いた。
「じゃあ行きましょう!」
下級生達はあたしにぺこりと一礼して、由紀ちゃんを取り囲んで歩いて行く。
由紀ちゃんって、人気あるんだなぁ…。
面倒見いいし、しっかりしてるから分かるけど。
さて…頷いたものの、これからどうするか、迷ってしまう。
“行く所”
早く会いたいけど…今行っても、近寄れるか分からないし、最後くらい平穏に過ごしたい。
ボタンだって欲しいけど…もうないだろうと、諦めている。
うーん…どうしよう…。
迷っていると、
「苺先輩、ボタン下さい♪」
背後から、声をかけられた。