ちっちゃな彼女。*30センチ差のいちごな初恋*

ブレザーのジャケット。

ボタンのあった位置には、紺色の糸が出ているだけ。

ボタンは全てなくなっていた。
ネクタイさえもなくなっている。

どうやら“戦争”は、メグの登場を待たずに終わったみたい。

「そんなぁー…」

大和のブレザーを掴んだまま、がっくりと肩を落とす。

他の何人かの女の子は、大和のボタンを手に入れた。

高校の“思い出”にって、大切にするんだろう。

だけど、メグには何も残らない−…。

俯いた顔。
羨ましくて悔しくて、目にはじわじわと涙が浮かんで来た。


「間…?」

雰囲気的に察したのか、さっきまでとは違って、心配するような声のトーン。


「…最後なのに……」

初めて弱音を吐いた。

今までどんな時でも、脳天気に笑っていられた。
気にしてないフリは簡単で…。

だけど、この瞬間は無理だった。

弱音は本音。
あと少しだけの限られた時間が、素直にさせる。


「最後…とか言って、どうせまた俺に付き纏うんだろ?」
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