ちっちゃな彼女。*30センチ差のいちごな初恋*
あたしは慌てて、携帯を開く。
受信BOXを開いて、送信者を確認する。
【西藤くん】
名前を見た瞬間手が震えた。
恐る恐るメールを開く。
【返事遅くなってごめん。まだ学校いる?居たらもう少し待ってて。先生見つけたら戻るから。】
絵文字も顔文字も、使わないメール。
久しぶりの、西藤くんからのメール。
何でかな…嬉しいの?悲しいの?胸が苦しい。
【まだ居るよ分かった、待っとくね!】
返信して、震える手にぎゅっと力を入れる。
どうしよう…どうしよう…。
「早く入れちゃいなよ!」
急に声が聞こえて、声がする方を見ると、西藤くんの机の前に3人女子が立っていた。
「でも…」
躊躇う女の子の腕の中には、ピンクの包み紙。きっとチョコレートだろう。
「入れちゃお~♪」
一人がそう言うと、西藤くんの鞄を勝手に開けて、赤色の袋を鞄の中に入れた。
「あっ、ミカもっ!」
躊躇っていた子も、鞄の中に入れる。
「王子帰ってくる前に早く帰ろ!…あ!津田さん内緒にしといてね!」
「あ…うん!」
女子3人は、そそくさと教室から出て行った。
チョコか…。
西藤くんは今日、いくつのチョコを貰ったのかな…?
自分の鞄を開いてみる。
やはりピンクの包み紙でラッピングされたチョコレート。
しかも手作り。
渡すつもりはない。
西藤くんには、藤堂先輩が居るから。
あたしが藤堂先輩…“彼女”だったら、例え義理でも他の女の子から貰ってほしくない。
だから、これは自己満足。
渡せなくてもいい。
ただ、女の子としてバレンタインを味わいたかったの…。
今までこんな事…恋した事なかったから。