ちっちゃな彼女。*30センチ差のいちごな初恋*
♪苺side♪


まだ寒い体育館。
順調に進められていく入学式。

あたしの頭の中は西藤くんで、いっぱいだった。

避けてしまうみたいにしてしまった罪悪感と…
何か他の気持ちが混ざったような…
切ない気持ち。

そっと視線を前列の右にやる。
目に写るのは西藤くん。

顔は見えないけど…後ろ姿を見るだけで“きゅん”となる。


まだ、こんな気持ちになる自分が嫌い…。


しばらく、西藤くんの後ろ姿を見つめていた。
すると、始めは真っ直ぐだった西藤くんの首は、ゆっくりと前へ倒れ、また戻り、倒れ…をくり返す。

ね…寝てる?

ふいに「くすっ」と小さく笑った。

「どうしたの?」

隣の女の子がこっちを見る。

「ごめん、何でもない」
「ふーん」

女の子はまた、前を向く。

特におかしい事じゃない。
寝ている人はたくさんいるし、西藤くんだって居眠りしないような、真面目キャラではないし…。

だけど、あたしにはおかしかった。

いつも眠っちゃうあたしが起きてて、西藤くんが寝ている。

よく考えたら“おかしい”よりも…“かわいい”って思う気持ちかもしれない…。


「一同、起立!」

わっ!
あたしは皆より、1テンポ遅れて立った。

「礼!…着席!」自分の世界から、いきなり現実に戻らされた。

いつの間にか入学式は終わっていて、新入生はぞろぞろと体育館を出て行く。

「あの子結構カッコイイ感じじゃない?」

隣と、そのまた隣の女子の、話し声が聞こえた。

「えっどこっ?」
「ほら…赤いメガネの女の子の後ろの……もうすぐこっち通り過ぎる!」

あたしもつられて、その男の子を探す。

………っ!?

「わかった!カッコイイ!でも…ちょっと背、低くない?」

メガネの女の子の後ろに隠れてしまうくらいの男の子。
そう、その男の子は今朝の―…。

「ちょ!聞こえたんじゃない?こっち見たよ!」

確かに彼は、こっちを見た。
でも、話をしていた女子じゃなくて…彼と目が合ったのは…

あたし?

彼が、通り過ぎるまでの3秒くらい、見つめ合ってしまった。

やっぱり怒ってるのかな…?

あたしは、そのくらいにしか思わなかった。
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