ちっちゃな彼女。*30センチ差のいちごな初恋*
「へっ?」
人の固まりから出て来たのは…
今朝の彼だった。
彼はこっちに歩いてくる。
どうしよう…やっぱり怒って…あ、謝らなきゃ!
「「ごめんなさいっ!」」
二人の声は、綺麗に合わさった。
クラス中が笑う。由紀ちゃんも、あたしの横で笑ってる。
「先輩は悪くないっすよ、俺が無理矢理、引っ張ってたんですから」
「や…でも」
「本当にすみませんでしたっ!」
彼は深々と頭を下げた。
「いいですよっ、頭上げてくださいっ」
彼は頭をゆっくり上げて、あたしの目をじっとみる。
「え…と…」
そんなに見られると、恥ずかしいんですけど…。
「先輩っ!俺、先輩に一目惚れしましたからっ!」
彼はそれこそ、ちっさな体で大きな声で言った。
クラス一同が予想外の展開に、しーんと静まりかえる。
そっかぁ…一目惚れかぁ…。
一目…惚れ…!?
「…えっ?」
キーンコーンカーンコーン…
タイミングが良いのか悪いのか…予鈴が鳴った。
「やっべ!俺帰らなきゃ、また先生怒られるっ!」
彼は床の鞄を持って、急いで教室から出た。
「じゃあ、先輩また明日ー♪」
そう言って、ぶんぶんと手を大きく降りながら、笑って出て行った。
「………」
呆然と立ちつくすあたしに、一間おいて皆がひやかしにかかってきた。
「津田さん、入学早々1年落とすとかやるねぇ!」
「あの子、カワイイし苺ちゃんとお似合いかもっ♪」
自分でも何が何だかわからないのに、盛り上がるクラスメイト達。
とりあえずあたしは、そんな皆を軽く遇って、由紀ちゃんに地図帳を渡した。
「ありがとう。苺…大丈夫?」
由紀ちゃんは、勝手に盛り上がるクラスを見る。
「うーん…まぁなんとか。あっ、早くしないと遅れるよ?」
「あぁ…ホントだ!また授業終わったら来るから!」
由紀ちゃんは教室を出て、一度立ち止まった後、走っていった。
そして、由紀ちゃんと入れ代わるように、一人のクラスメイトが教室に入ってきた。
それは、西藤くん…。