ちっちゃな彼女。*30センチ差のいちごな初恋*

「…なんかあったのか?」

やけにざわつく教室に、西藤くんは疑問を持ったみたいで、誰に言うわけでもなく呟いた。

「あー西藤くん♪聞いて聞いて~♪」

クラスの女子の一人が、西藤くんに近づく。

言わないでっ!

「…っやめて」

あたしは咄嗟に止めようと、2人に近づいたが、

「あのねぇー、苺ちん告られたんだよぉ?」

間に合わなくて足を止める。

「告られた?」
「そぉ~愛の告白♪1年でちっこいんだけど、めっちゃカワイくて~マジ苺ちんとお似合いなのぉ♪♪」
「そぉなのか?」

西藤くんは、じっとこっちを見る。

違うって言いたい…
だけど、嘘じゃない。

何も言えない…。


「お前ら、何してる!早く席につけ!」

本鈴のチャイムが鳴ると、同時くらいに先生が入ってきた。
ざわざわとしていた教室はすぐに静まりかえり、みんな自分の席へと急ぐ。

西藤くんも歩き出して、あたしの横を通り過ぎようとした…その時、西藤くんはあたしの頭の上に掌をポンッと乗せた。

「やるじゃん。良かったな」

笑顔で言った。

あたし…何もしてない。

何が『良かった』なの…?

名前も知らない…今日会ったばかりの人と付き合うとでも、思ってるの…?


目の奥が熱くなる。
あたしはうつむいて、自分の席に腰かけた。


クラスの皆にからかわれるのは嫌…。

だけど、もっと嫌なのは、

あなたに『良かったな』って言われた事だよ…。

でも…

でも、

1番嫌なのは、
こんな事で泣いてしまうあたしだね…。

忘れなきゃ…“友達”はこんな事で泣かない。
早く忘れて………だけど、こんな近くじゃ難しいよ…。


教科書を持つ手に、ぎゅっと力を入れた。
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