ちっちゃな彼女。*30センチ差のいちごな初恋*


「苺~、おはよぉ♪」

玄関で翔くんと別れて、教室へ上がろうとした時、聞き慣れた声がした。

「由紀ちゃんっ!?」
「何驚いてんのよ」
「だって、朝練は?」
「昨日入学式だったからさ…まだ椅子とか残ってて体育館使えないの」
「そっか!ごめんね、先に行っちゃって」
「いいのいいの~♪」

それよりさ…と、由紀ちゃんはあたしに近付いた。

「あの1年と、付き合う事になった…?」
「そっ、そーゆーのじゃないよっ!」
「またまたぁ♪いい感じだったけど?」
「本当にそーゆーのじゃないんだってば!」
「じゃあどんなの?」
「えっと…まぁとにかく気に入った女の子の一人…みたい」
「はぁー?それって何股もかけられてるって事?」
「うーん…まぁ違ってないけど、違うみたいな…」

説明の仕方がよくわからない。
困っていると、由紀ちゃんはあたしの頭を撫でた。

「もぉわかったから!あの1年と…誰とでも、付き合う事になったら、1番に言ってよね?」
「うんっ!」

もし、その時が来れば言われなくても、あたしは1番に由紀ちゃんに報告するだろう。

この時はまだ、西藤くんを諦める事に必死で、翔くんの『好き』の意味を知り、誰かと付き合うとか考えてなかった。

だけど、翔くんに出会った事で確実に…あたしの恋はもう一度、動き始めてたんだ。
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