頑張り屋な彼女と紳士の皮を被った狼
どわーーーー!

すきって、すきって――。


「そんな、さらっと言わないでください。他意がないとわかってても、なんか照れますよ!」

「他意ですか?」


主任は不思議そうな顔をして首を傾げる。


「そうです! 主任人気あるんですから、そういうことさらりと言われると、乙女女子はドキュンとくるんです!
 深読みする子もでてくるんですから、気をつけないとだめですよ」


そう、主任に優しく声をかけられただけで、私に気があるんだvなんて誤解する女子がでてくるのだ。

危険、危険!

この人のこの紳士ぶりが危険である。


ある先輩女子なんか、「あの爽やかさと、紳士さがいいの~v」なんて言って、ぞっこんになってたりする。

私は、むせそうになったのをむりやりお茶で流し込んで、一息付く。

すると、その横で主任はぼそりと言った。


「他意も、深読みもして頂いて全然かまわないんですが……」


は?


「市川さん。別に僕は誰にでもこう言うことを言うわけじゃありませんよ?」


イマノハ ドウイウ イミデスカ??


すると、私の横のデスクで食べてた主任が、椅子ごとこっちへにじり寄ってきた。


「僕は好意を寄せている女性以外に特別優しくするつもりもありませんし、
わざわざ出先から戻ってきて、夜食を届けたりもしません」


――は?


「……この意味わかってます?」


ゼンゼン ワカリマセン。


はあ。

主任は一つため息を落とすと、


「僕は紳士だと思われてるようですが、好意を寄せている女性に対していつまでも紳士でいられるほど、大人でもありませんよ」


そう言って主任は、私の脇に両手を突き閉じ込めると、顔を寄せてきて――。


――キスをした。

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