頑張り屋な彼女と紳士の皮を被った狼
ほんの一瞬唇が触れただけだったが、私の頭の中は真っ白になった。

え?今のなに……。

呆然として固まっていると主任が言葉を続けた。


「はあ、やっぱり市川さん気づいていませんでしたね。僕はこれでも結構アピールしているつもりだったんですが」


アピールってなんの?


「市川さんは気づいていないようですが、男性諸君に人気があるんですよ。
 僕は市川さんがいつ誰かと付き合い始めやしないかとひやひやしていましたし、
 僕の気持にも全然気づいてくれませんし……」


え?


「なので、今夜がチャンスだと思いまして」

「え? あの……、チャンスって何の?」

「何って、告白するチャンスです」


こっ、こくはくーーーー!?


「ああ、順番が逆になってしまいましたが、市川さんはちゃんと言わないとわかりませんよね」


そういって、主任は頭をかくと、


「頑張り屋な貴女が好きです。僕とお付き合いしていただけませんか?」


そう、にっこりと笑って素敵な笑顔で言った。


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