黒い男と白い女
「それにしても斉川くんってタバコ吸うイメージないよねー。小さいのが更に小さくなっちゃうよ。あっ、さっきの頭痛いのも嘘でしょー。私、わかるんだよねー」


「橋崎、少し黙らないか?」


「なんで?」


俺は煙をくゆらせ、一息ついた。


「お前さっきから話しすぎ。うるさい」


「じゃー、斉川くん何かお話しして」


「…………」


「ほらー、何もしゃべらないから私がしゃべる!」


「勝手にしろ」


「そうすることにしよう!」


それから橋崎は駅に着くまでの20分間、ひたすら話し続けた。


さっきの講義の話、教授の悪口、課題のレポート、就職活動について。


俺と橋崎から大学を取ったらなにも接点がないことが改めてわかった。


「ねぇ、斉川くん。好きな音楽ってなに?」


この別れ際の質問だけ別だった。


「流行りの歌はわかんねぇ。だから、洋楽しか聞かない。英語で言ってるから意味わかんないけどな」


「カッコつけだね」


「悪いか?」


「いや、全然」


それから橋崎は俺とは逆のホームへと走って行った。
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