俺様彼氏と空手彼女
今あいつには従兄がいるみたいだし、少しの間だけなら
そう思って、俺は璃依から身を退いた。
それからしばらくたったある日。
学校も終わり、いつも璃依と帰っていた時間を一人で歩いていたときだった。
「おい、ちょっと顔貸せよ腰抜け」
不愉快なこの声。
すぐに誰かわかった俺は、思いっきりそいつを睨み付けてやった。
それでもひるむ様子もなく黙って俺を見据える、璃依の従兄、隼人。
俺の璃依に何をしていたか、この顔を見れば嫌でも思い出して苛立つ。
「なんすか。俺に何か用でも?」
「話がある。ちょっと来い。」
眉間にシワを寄せつつ、踵を返しどこかへ行こうとする。
癪だが、璃依の話であることは明白なため、黙ってついていくことにした。
連れてこられたのは、どこにでもあるようなファミレスだった。
なんだ?
俺におごれとでも?
「まあ座れ」
ウェイトレスに案内され、ついた席は窓側。
大通りを走る車しか見えないような、微妙な景色の席だった。