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モノクロォムの硝子鳥
美味しさに感動して勧められるまま紅茶を飲んでいたが、ふと自分の置かれている状況を思い直してひゆはティーカップをソーサーへと戻した。
「お口に合いませんでしたでしょうか?」
心配そうに覗き込んで来る九鬼に小さく首を振る。
「――私、此処に用があって連れて来られたんですよね? こんな、ゆっくりしてて良いんですか?」
テーブルの上でぎゅっと手を握り締め、平静を装いながら静かに彼へ問い掛ける。
人と目を合わせて会話するのが苦手なひゆは、視線をティーカップに落としたままだったが。
「お気遣い有難うございます。お時間の方はまだございますので、蓮水様はごゆるりとお寛ぎ下さい」
時間を気にせず寛ぐように言われても不安は拭えない。
この後自分に何が待っているのか……それを考えると紅茶以外に手を伸ばせず、じっと固まってしまう。
ひゆの様子の変化に九鬼は直ぐに気付いた。
「甘い物は、お好きではなかったでしょうか?」
「あ……いえ。どちらかと言えば、好きです」
目の前にある可愛らしいお菓子達はひゆを誘うけれど、とても進んで食べる気になれない。
すると、おもむろに手袋を外した九鬼がケーキスタンドからスコーンを取り、一口サイズくらいの大きさに割った。
急にどうしたんだろうと、彼の行動を不思議そうに見詰める。
美しく長い指が銀のジャムナイフで、手際よくスコーンにクリームとアプリコットジャムを乗せてしまう。
綺麗な指だな……とぼんやり眺めていると、ひゆの目の前に彼によって飾られたひとかけらのスコーンが差し出された。
「……え? あの……」
「自家製のジャムと当家のシェフが作った自慢のスコーンです。一口だけでも召し上がって下さい」
どうぞと口元へそっと近付けられて、逃げるように顎を引いた。
食べるのを促してくる九鬼の視線と、目の前のスコーンを見比べてしまう。