モノクロォムの硝子鳥

ずっと落ち着かない鼓動に何度目かの溜め息を漏らす。


「そのように溜め息をつかれては、美味しく感じられませんよ」


長い指にそっと顎を掬われる。
あ、と口を開いた瞬間。
スコーンはあっさり口の中へと押し込まれてしまった。

ふわりと広がる滑らかなクリームと、甘くて濃厚なアプリコットの味。
スコーンの歯ごたえも軽く、美味しさのあまりあっという間に喉奥へ消えてしまった。


「如何でしょうか?」


口元に付いたクリームをナプキンでそっと拭い取ってくれる九鬼に尋ねられ、ひゆは素直に「美味しいです」と答えた。

もっと味わって食べれば良かったと思うくらい美味しいスコーン。


「……もう少し、食べても良いですか?」


気付けば、自然と口にしていた。
先ほどまで素直に食べなかったのに、随分と現金だな、と自分でも思うけれど。

ひゆの小さな言葉に、九鬼は直ぐに新しいスコーンを皿に乗せてくれた。


「暖かいお茶を、今度はミルクで淹れ直しましょうか」

「はい」


ぎこちないけれど、それでもひゆは少しだけ笑顔を覗かせてひゆは頷いていた。

< 24 / 45 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop