モノクロォムの硝子鳥

ソファーの背に頭を預け、目を閉じたまま考えに耽りながらそっと指先で唇に触れてみる。

軽く触れてみると、まだほんの少し九鬼の温もりが残っているような気がした。

(……キスって、あんな感じなんだ……)

九鬼との口付けを思い出すと、じわりと肌が熱くなった。

唇を重ね合わせるだけだと思っていたのに、喉奥まで探られるような深い口付け。

溶けるような舌の熱さや、優しいのにどこか支配的な彼の手が、ひゆの深い場所に押し込めているものを暴かれそうで怖い。

妖しい感覚に捕われそうになってキュっと唇を噛みしめる。
考えちゃいけない、と自分に言い聞かせて頭を振った。

考えなければいけない事は他に沢山ある。

この志堂院の屋敷に連れられて、家に帰して貰えないなら、自分はいつまで此処に居れば良いのか。
生活する手立ての無いひゆにはまだ保護者が必要だ。
それに通っている学校の事もある。

幸いかどうか、今日が金曜日だったので明日と明後日は学校はお休み。
バイトもしていないので、出かける予定も特に無かった。

それでも、その後はどうしたら良いのだろうか。
この屋敷からちゃんと学校へ行けるのか、そもそも屋敷から出られるのかどうかも怪しい。

考えれば考えるほど問題が増えて、頭痛がしてくる。


「……ほんとに、どうしたら良いんだろ」


疲れた重い気持ちを抱えて、何度目か分からない溜め息を吐いていた。

< 43 / 45 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop