Maidoll Factory
そうして、約一ヶ月が過ぎた。

「お待たせ致しました、ご注文のメイドール65号が完成致しました」

僕は少年の自宅へと完成したメイドールを届けに行った。

といっても、完成したメイドールは配達用の軽トラックの後部寝台に寝かされたまま。

スカイブルーの流れるような美しい髪を持つその美少女は、静かに眠りについたままだ。

「あ、あの…これ…?」

注文通りの仕上がり、しかし微動だにしないメイドールに戸惑う少年に対し。

「完成したメイドールは、生まれる前の卵の中の雛鳥と同じです」

僕は彼に説明する。

「どうぞ、このメイドールにお客様の考えたお名前で呼びかけて、眠りから覚ましてやって下さい。目覚めた瞬間にお客様の顔を見て、初めてメイドール65号はお客様を自分の主と認識するのです」

「……」

その言葉に緊張した面持ちの少年。

「じ、じゃあ…お、起きて。起きてよ、フィノ」

少年は小さな声で、己の考えたメイドールの名前を呼ぶ。

「もっと強く、大きな声で呼んであげて下さい」

「フィノッ」

「もっとです。力強く」

「フィノ!」

少年はメイドールの耳元で声を上げる。

「目を開けて、フィノ!」

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