non title


腕時計で時間を確認。
そろそろ行くか、と雑誌を棚に戻して、出口に向かった。
その途中、棚に並ぶ雑誌に、数人のユウを見た。
今度公開する映画の役どころもあってか、どれも普段のユウとは雰囲気の異なる表情をしている。
どのユウも一点を見つめている。
鋭い瞳で、こっちを見ている。
なんて目をしてるんだろ。
ハルナの知らない、ユウの目だ。

視線を背けて、その場を後にした。
逃げるように、怪しい音を立てる心臓をおさえて、足早に。

ハルナの知っているユウは、あんなんじゃない。
もっと優しい目をする人だ。
あれは、ユウなんかじゃない。
そう心の中で呟くと、吐き気がした。


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